私の愛聴盤 15枚目です。

渡辺貞夫 HOW'S EVERYTHING SRCS9590 1980(RE-MASTER)

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いま、このアルバムの発売年を打ち込んでいてふと思ったのですが、
このライブアルバムの発売から今年で25年にもなるんですね。
早いものです。

私がRICHARD TEEにハマッたのは何を隠そうこのライブに行ったからなのですが、今でもこうしてあの時の衝撃が繰り返し聴けて思い出せるということはとてもすばらしいことです。

...梅雨もまだ開けぬ1980年7月4日。
高校の試験中であるにもかかわらず、このブドーカンでの3日間のライブの最終日に、今はオーストラリアにいる中学時代の友人と行きました。
もちろんチケットは(当時の私としては)奮発して渋谷西武の地下にあったプレイガイドであらかじめ買っておきました。

他のところでも書きましたが、この頃はナベサダは絶好調で、アルバム発売、ライブ、CM出演などあちこちでブレイクしていたので、ジャズファンだけでなく一般の人にも知られており、このブドーカンを観客で一杯にするにはそれほど心配がなかったことと思います。
このアルバム2曲目の終わりのおねえさんの絶叫がそれを物語っています。(当日この声ナマで聞きました!)

行き帰りのことなどはまったくといっていいほど覚えていませんが、
とにかくRICHARD TEEに驚いたことだけは鮮明に覚えています。

ライブは気がつくとオーケストラの演奏で始まって、しばらくするとナベサダのサックスがオーケストラに被さり、ナベサダとオーケストラの前奏が一旦止むかというところで「NY職人ミュージシャン」の演奏が始まります。一呼吸置いてナベサダが袖から姿を表すころ、会場は盛大な拍手に包まれました。
キャスト紹介的なアレンジのこの曲は独特の雰囲気がありますが、次々とNY職人ミュージシャンの短いソロが続きます。
ギター、ドラム、パーカッションとどれもすばらしい!と思ったのですが、ピアノが出てきたときには「ピアニストが2人なんでこんなにボリュームあるのかな?」と思ったのもつかの間、もう一人のピアニストDAVE GRUSINはなんと立って指揮棒を振っているではないですか!!!
「はぁ?これって一人で弾いてるの?」
私は腰を抜かしました。それから私の耳はピアノに釘付けでした。
それとドラムとのコンビネーションの良さと言ったら!
「なんなんだこの人たちは?」という感じでもありました。

このライブ、たぶん録音していたからだと思うのですが(エンジニアまで向こうから呼んでいるのです!)、途中休憩なしでぶっ続けでした。
しかも演奏するのは新曲ばかりなので、「レコードで聴いた曲のあのピアノの部分は?」なんて比較もほとんどできません。とにかく「一音でも逃さまい!」と思って、時にはリズムに乗って、時には噛締めるように、頭に残るようにと願いながら最後まで聴いていました。
もちろん覚えられるわけはないのですが。

続く2曲目はRICHARD TEEのピアノがとても目立つ曲で、曲としては短いのですがとてもゴキゲンな曲です。最後のところに例のおねえさんの絶叫が入っています。
この曲、初期のCDには収録されてなく、リマスターCDになって追加されて感動したのですが、残念ながらJEFF MIRONOVのギターソロの部分がカットされています。とても勢いのある気持ちのいいソロなんですが収録時間の関係でしょうか残念です。
レコードではもちろん全て聴くことができます。

何曲か終わった頃ナベサダが各メンバーを紹介し始めました。
あまりお話は上手ではないのですが、それぞれを面白く、時にはまじめに紹介していました。

RALPH MACDONALDは、「忙しいスケジュールを割いてもらってやっと来てもらった」と言っていました。
「ドラムはMr.STEVE GADD!!」なかなか鳴り止まぬ、もの凄い拍手でした。
おかしかったのは次。
「ピアノのヘビーウェイトチャンピオンです!!...Mr.RICHARD TEE!!」
爆笑のあと大拍手。これもなかなか鳴り止みませんでした。もちろん私は目一杯の拍手。

ERIC GALE、STEVE GADD、RICHARD TEEの3人は「STUFFのメンバーです」位言っても良かったと思うのですが、おそらく観客のなかの音楽好きな人達はきっとこれらの職人ミュージシャン目当てで来ている人もたくさんいたはずなので必要なかったのでしょうか。

NICE SHOTというそのころCMで使っていた曲が始まるとやはり皆さん知っている曲なので盛り上がり拍手も多めです。

演奏される曲は緩急うまく取り混ぜており、半分位まで行くとずいぶんと落ち着いたいい雰囲気になってきました。

しかし!油断をしていたら7曲目のNO PROBLEMという曲ではNY職人ミュージシャン大爆発!
変わらぬ表情で淡々とソロをとるERIC GALE、RALPH MACDONALDのタンバリン,STEVE GADDのドラム&シンバルがすばらしい。

1曲置いて9曲目のSUN DANCEでは後半のところでRICHARD TEEとSTEVE GADDの二人芝居が大爆発!!!
この部分でナベサダは踊っていました。きっと本当にうれしかったのでしょう。こんなミュージシャンとライブができたのですから。
しかし私はこの時これらの人達がどれくらいすごい人たちなのかまだ詳しくは知りませんでした。
この曲、ライブアルバムに入っているのは二人芝居のGADDのドラムが早めに入るバージョンですが、FM番組(マイディアライフ)で放送された遅めに入るバージョンはRICHARD TEEがさらにゴキゲンで、ソロの部分に入る入り方も違っています。
このソロの部分はときどき頭の中で鳴ってしまい、ついついリズムをとってしまいます。
たたみかけるような弾き方がとても好きです。

10曲目は結構長い曲ですが、ベースのANTHONY JACKSONのソロがすばらしいです。
実はNHKテレビで放送されたナベサダの特集番組があるのですが、このライブも一部番組として製作されていて録画テープを持っています。それを見てこのソロのすばらしさに気がつきました。
このソロもアルバムでは何分の一かにカットされていて、おいしいところは聴けないのが残念です。

このアルバムの最後に「MY DEAR LIFE」というナベサダのテーマ曲ともいえる曲が入っており、アンコールの最後に演奏された曲ですが、もう一曲のアンコール曲「WE ARE THE ONE」をぜひアルバムに入れて欲しかったですね。あの「モーニングアイランド」から唯一演奏された曲だったのに残念。

さてアンコールが全て終わると各界の有名人がお祝いの花束をもってステージに出てきました。
中でも出てきたその姿でだけで会場の大爆笑を買ったのが「草刈正雄」さん。
当時資生堂ブラバスのCMでいつもバカな競演をしているお相手でした。

このライブ、全体的に日本人のオーケストラのトロさやキレの無さが目立つのですが、これは仕方が無いでしょう。おそらくアドリブ連発のジャズの経験はないでしょうから。
きっと楽譜追いかけっぱなしだったのではないでしょうか?結構パラパラやっているのが見えました。それに笑顔も無かった!
でも職人さんたちは違っていました。ほとんどが楽しそうにまたは気分良くプレイしていたと思います。大舞台で緊張はしているようでしたが、観客を喜ばせる術を知っているようでした。
オーケストラの人達は3日間毎日(リハを入れるともっとかな)、職人さんたちの「毎日毎度毎回違うソロ」に目を丸くしていたのではないでしょうか?

このライブ、25周年記念ということで、このメンバーでもう一度やってもらえませんかね。

チケット1枚100万円でも行きたいです。ムリムリっ!